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文楽初日

2012/05/13 15:21

 

「蝶の道行」目当てで第一部のチケットをとりました。

 

今確認したら、1年以上文楽を見てなかったのね。そのせいかエライ楽しかった

 

「八陣守護城」

中村魚眼・佐川藤太作。初演は文化4年(1804年)、道頓堀大西芝居である。徳川家康による豊臣家攻略を、加藤清正の毒殺という俗説と真田幸村の軍略を中心にした物語で、今回は四段目・八段目の上演(というパターンが多いそうな)。

徳川家への批判に繋がることを恐れ、登場人物は以下の名前で登場する(内は原作)。

 

加藤清正=佐藤正清(加藻朝清) 加藤忠広=加藤主計之介 徳川家康=北条時政(北畑春雄) 後藤又兵衛=児嶋元兵衛 池田輝政=森三左衛門 島津義弘=大内義弘(真田幸村=正木雪聡)

 

小田家に代わって天下を狙う北条時政は、小田家の嫡孫若君へ将軍宣下を行う役目の勅使に通じ、天盃に毒を仕込んで供応役の佐藤正清へ飲ませる。時政の代理で勅使を迎えた重臣の森三左衛門は正清を欺く為にこれを受け、死に臨んで主へ諫言をするが聞き入れられない。
時政は、正清の様子を探る為に間者を放つが、確かに盃を受けた筈の正清の様子は変わらないので不審を抱く。実は、春若君守護の見通しが立つまで必死に体の異常に耐えていた正清であった―。

 

今となっては、後70年弱で江戸時代は終わっちゃうような頃の改名がとても空々しく感じるし、戦国は遥か昔のことなのにこの種の御芝居を作り続けるあたり、江戸に天下を奪われた大坂人のルサンチマンを見て感無量になったりする(あ、「プリンセス・トヨトミ」読まなきゃ)。

いかにも丸本の時代物らしい、おどろおどろしいあざとさの目立つ作品と歌舞伎で見た時には思ったのだが、お人形だと案外気にならず、戦国を生きた漢の心意気を感じさせて大変面白く見ることが出来た。

 

加藤正清が、懐の深いいい男として描かれている。時代物のオトコにありがちな男馬鹿ではない。男馬鹿な面と同時に、女子供の心情を汲み取って十分に応えてやれる、柔らかで繊細な感性を豊富に持っている人だと思った。それが大詰の「本城の段」。優しい面はお父さんに任せ?典型的な男馬鹿として描かれている主計之介に離縁状をつきつけられ、絶望して自害した雛絹(森三左衛門の娘)の為に、軍旗に息子と彼女の名前を並べて書き、「敵となり味方となるもこの世の業」と言葉をかけてやるところ、本当に素敵だった。

又かっこいいお人形だし。特に「浪花入江の段」で御座船がぐるっと回って横顔を見せるところが、悠然たる武将の貫録が光って素晴らしい。遣うのが玉女さんだから余計に引き立つのだが…

 

玉女さん、髪の量が増えたような…

ゆったらいけないこと??

 

雛絹もいい。しっかり者のお嬢様だけれど主計之介の前ではでれでれしちゃうギャップとか。

 

ところでこの作品は、適当でどうでもいいような人達―観客と等身大の存在―が面白い。万古不易、腰元達の女子トークは勿論

(咲甫さんが語るのがなぜかとっっても感じ出てた)、敵役の鞠川玄蕃が傑作である。

与勘平という、愛玩犬のような顔つきの頭の彼は、雛絹にぞっこん。勤務時間中なのに「どうじゃぞいの」すがりついてといきなりくどきにかかるし、雛絹母・柵に咎められると「仕方ない」とばかりに求婚するのだが、その台詞があまりにストレートすぎて可愛い

 

「かねがね拙者大執心でござれば」

 

大詰では妖術使いという裏の顔も見せちゃう彼だけれど、中々客席の笑いをさらっていた。

 

「契情倭荘子―蝶の道行」

今月の本命。ついに本業で見られます

 

人形の助国と小巻は、古風でのんびりしていて、微笑ましいカップルとして登場した。助国の扇に小巻が止まるところ、蝶々らしさの表現だとは思うんだけど、フィギュアかアイスダンスを思わせて斬新だった。

責め苦を表現する後半は、舞台に火を思わせるものは何もない代わり、大夫が、三味線が、人形遣いが彼等をとことんまで責め苛んでいるように見え、客席に緊迫が走る。幕と同時に、我に返ったような拍手。何という残忍で、美しい趣向だったろう。

 

満員だった。来月の若手会も売り切れていた。よかった。

 

 

 

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大事には違いないのだが ニュース記事に関連したブログ

2012/05/05 17:10

 

日本に個人主義が育たない理由を、唯一神がないから。という意見には、私はずっと疑問を持っている。疑問のままに留まっているのでここでは措く。

 

加地先生は嫌いじゃないんだが、こういう意見を読まされると白ける。きっと、加地先生やこの意見に同調する人々は、血が繋がっているからこその愛憎の葛藤の中で、心身をすり減らす経験をしてないんだろうね。
 

家族で大事なことは血の繋がりではない。勿論、憲法24条の改変でもない。縁あって同じ血筋に連なる者に対する敬意である。血の繋がりに甘えて、相手の人格を無視した言動をとらないことである。

 

単なる左翼に対する対抗意識から漠然と「家族は大事」と言いあげる人達に、日頃家族とどういう風に接しているの?と聞きたい。

 

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新橋演舞場夜の部

2012/05/05 16:36

 

微熱あり、洟ぐじゅぐじゅの状態で見た「椿説弓張月」。2回目だけれど10年位前の観劇だから、殆ど覚えてなかった

 

「三島さんだから出来た壮大な歌舞伎ごっこ」という気がしなくもないし、戯曲としての評価は高くないらしいが、死に場所を探しているような為朝には清々しい悲壮美を感じて、私は結構好きである。玉様の出世作だし

最も、為朝よりも琉球王朝の御家騒動をメインに描いた方が話としては面白いんじゃないかと思っているが。。。

 

今回は、染ちゃんを中心に、若手がメインの配役である。

 

源為朝(市川染五郎) 白縫姫/寧王女(中村七之助) 高間太郎(片岡愛之助) 陶松寿(中村獅童) 鶴(中村松江) 亀(尾上松也) 左府頼長の霊(大谷廣太郎) 舜天丸冠者後に舜天王(中村鷹之資) 源為頼(中村玉太郎) 武藤太(坂東薪車) 大臣利勇(澤村由次郎) 源為義の霊(大谷友右衛門) 巫女阿公/崇徳上皇の霊(中村翫雀) 高間妻磯萩(中村福助) 為朝妻簓江(中村芝雀) 八丁礫紀平治太夫(中村歌六)他

 

現地妻・簓江の父の裏切りに遭って為朝が大島を離れる「上の巻」、はつまらない。夫と父の板挟みとなる簓江の愁嘆場が、ほんっとにごっこそのもので空々しい。芝雀さんのせいでは無論なく、彼がこってりと糸に乗って熱演すればするほど、

 

三島さんは義太夫狂言のストーリー展開や演技法を皮肉ってるのかな??

 

としか思えなくなってくるのである。

 

染ちゃん、大星はイマイチだったけど、ドレッドっぽい鬘が中々色っぽくてまずははまり役、と思う。

 

歌舞伎として一番面白いのは、残虐とスペクタクルを楽しめる「中の巻」だろう。特に、気性の激しさを隠しもしない七之助君の白縫姫が、予想以上の素晴らしさだった。谷崎の「刺青」じゃないけど、武藤太(薪車さんの悶えぶりが美しく、どうしても目を離せなかった)の生血で肥え太り、むくろを踏みつけることで輝いていきそう…玉様のある素質を、彼も確実に継いでゆきそうで期待している。海上のシーンも緊密で、3Sに馴染んだ目にもまずまずと映った(うわー、上から目線)。蝶が綺麗。

 

御家騒動である「下の巻」は、話の中身から言ったらもっと派手にしてくれてもいい所だと思う。翫雀さんの阿公には、深い喪失感が滲んでいてよかった。

 

幕外で、白馬に乗った染ちゃんが花道を去ってゆくところで終わるが…

 

幕が閉まったらさっさと帰る連中(大抵、年配)の了見が知れない。大して時間も変わるわけじゃないし、幕外まで見届ける余裕のない奴は、歌舞伎に限らずどんなエンタメも享受する資格なし。

 

 

 

 

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読書メモ・134

2012/04/30 15:43

 

中島義道「ヒトラーのウイーン」

 

華の都で貧困と挫折の日々を送った青年ヒトラーを、中島先生自身の体験を重ねるようにして追ってゆく書き方がユニークであった。

明快な本ではない。けれども、明快であるがゆえに頭からヒトラーを狂人と決めつけ、そのことによって自らの良心を証明しようとする類の本など、今更読みたくない。

 

ナチズムという悪夢は、ごく普通の堅実な人々の中にこそ芽があった。反猶太主義は、何もナチスの十八番ではなかったし、ナチスの標榜した健康志向も清潔志向も、当たり前のモラルとして受け入れられるものである。

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敬語のこと ニュース記事に関連したブログ

2012/04/26 22:14

 

「両陛下逝去時の火葬検討」(時事通信)

 

まあ、時事通信らしい見出しなんだけど

社のスタンス以前に、日本語としてアンバランスだと思わないのかしらん?

 

 

「逝去」にしたいなら「陛下」をつけることないし、

そうじゃなければ「崩御」でないとおかしいのでわ?

 

 

いつも思うけど、メディアの皇室に対する敬語のひどさは、こちらが恥ずかしくなる位。しかも、外国の王族方に対しては敬語なしだし。
こんなことばかりしてるから、言葉に対する感覚が鈍ってゆくのではないだろうか。

 

 

 

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関連ニュース

読書メモ・133

2012/04/25 21:35

 

ロン・ポール/副島隆彦監修・翻訳/佐藤研一朗翻訳「他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ
 
 
監修者は癖がありそうで敬遠したいが、啓発的な内容ではあった。軍隊の記述や主語を隠せば、日本のことだって
思っちゃいそう。
 
 
リバタリズムについては、国情も違うから簡単に賛成、とはいえないが、身の回りのことを簡単に行政に委ねない、という姿勢は大いに学ばねばならないと思う。

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これなら

2012/04/22 21:42

 

食べ物の好き嫌いは多い方だが、出されたものは基本的に食べる。

 

でも、ぜーったい食べられないものの一つがマヨネーズ

アノ臭いであのクリーミーさがどうしようもなく駄目。

当然、卵サンドもシーザーサラダも駄目。絶対駄目。

 

ところが、昨日見ていた「世界ふしぎ発見」に登場した

本場の手作りマヨネーズは、卵の黄身にオリーブオイル等を少量ずつ混ぜながら擂粉木状のもので只管する。味は「塩味のクリームチーズのよう」だそうだから、これなら私も食べられそう。

ちょっと安心した。

 

ただ、オリーブオイルの加減を間違えると黄身と分離してしまい、

ねっとりならない上にオイルの味しかしなくなるみたい。

でも一度、試してみる価値はありそうです。

 

 

 

 

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今月の本命「絵本合法衢」

2012/04/22 18:16

 

 

本家乗っ取りの野望に邁進する左枝大学之助一味と、それを阻止する人々との凄惨な死闘を描いた、大南北の返り討ち物の傑作である。

 

…つまり、悪魔のような男達が周囲の人々を食い散らかし、踏み躙る、死屍累々の凄まじい、南北ワールド全開の作品である。主役の男2人を、現代立役の雄の一人・仁左衛門様がなさる。去年の震災で中断された公演の、再演である。

こりゃどうあっても、見ずにはおかない。

ああよかった、見ることが出来て

そんな熱気が、劇場中に溢れ返っていた。

 

左枝大学之助/立場の太平次(片岡仁左衛門) うんざりお松/弥十郎妻皐月(中村時蔵) 田代屋娘お亀(片岡孝太郎) 田代屋与兵衛(片岡愛之助) 孫七(市川高麗蔵) 太平次女房お道(片岡秀太郎) 松浦玄蕃(市川男女蔵) お米(中村梅枝) 佐五右衛門(片岡市蔵) 田代屋後家おりよ(坂東秀調) 高橋瀬左衛門/高橋弥十郎(市川左團次)他

 

えっと、今思い出せるだけで殺されたのは13人?

あ、鷹と燕を入れたら15人か(あの子鬱陶しかった)

 

勿論太平次もエゴイスティックで面白いんだけれど、大学之助の悪の凄まじさには及ばない。我儘な子供がそのまま大きくなったように、欲望に忠実で邪魔をする者は簡単に殺してしまう。最近ようやくわかったのだが、世の中には自分の行いについて全く疑いを持ったことのない人、自分はいつも正しいと、本気で思っている人が存在するのだ。大学之助は、多分そういう人種なんだろうと思う。

仁左様が彼に扮することによって、その存在はより大きく、そしてたとえようもなく魅力的に映る。彼の所業を憎みながら、恐れながら、一方で大学之助に引きずられ、言うなりに動くこと自体が歓喜になってしまうような…

 

時蔵さんのうんざりお松もかっこよかった

この方の造形する女性は、気品と色気に加えて男前だから、悪婆なんか最高である。切られお富とか見てみたいなー。

けどお松って悪婆かしら。

男好きで「悪いことなら何でも知ってる」と豪語してるし、海千山千の非人達を完全に飼い慣らしちゃってるけど、太平次に執拗に「私を捨てないで」とすがりついてうざがられ、殺されてしまうあたりは不器用すぎてもどかしい

ほたほたとしたお道@秀太郎さんによほど動揺したのだろうけど…

このおかみさん、殺された旦那と冥途で会っても「だから言わないことじゃないでしょ」ってたしなめるだけで、結局受け入れてあげそう…

 

孝太郎さんは、決して華やかな美人ではないんだけど、普通の女性の魅力をごく自然に出せる方である。大学之助のようなタイプがこういう女性をイイと思うのが面白い。らぶちゃんの与兵衛は水を得た魚というところだ。それは秀調さんも同様。完全に巻き添えを食った形で気の毒としかいいようがないが。
田代屋はあの、番頭のもの?松之助さん、お元気で何より。QPっぽい顔が可笑しかった

 左團次さんは、近頃本当に生真面目な御役ばかりだが、今回はもう典型。かっこよかったけどねー。

 

まあ、これだけの残虐を、これだけ楽しく見ちゃえることが凄い。

 

 

 

 

 

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読書メモ・132

2012/04/21 20:39

 

皆川博子「開かせて頂き光栄です」

 

…込み入っててよく、わからなかったので

 

猥雑で、活気に満ち溢れた18世紀の倫敦を楽しんだ。

このごたごたと、きっちりした英国人のイメージが

どう繋がってくるのかがよくわからない。

 

表紙のデザインの雰囲気が、皆川ファンである涼子さんの雰囲気と共通するものがある。

に書き忘れたので、ここに書いとくね。

 

 

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読書メモ・131

2012/04/19 22:18

 

北方謙三「史記 武帝紀⑥」

 

骨の髄まで文明人だった蘇武が、寒冷の地に閉じ込められ、文字通りのサバイバルライフを送りながら、命の重みと輝きに目覚めてゆく過程に心を打たれた。

著者が、好きなんだろうなあ。こういうの。私は、北方作品をよく知らないのでわからないけど…

 

司馬遷と武帝が、歴史の記述をめぐって静かに火花を散らすくだりも、緊迫感に満ちている。こういう闘いは、文筆を生業とする人だけが理解出来るのだろうと思う。

面白かった。

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